大山火山に由来する不安定堆積層への崩壊対策工の検討

ダイニチ技研株式会社
高嶋 博子
 赤井  隆

 

 
1.はじめに
 
鳥取県西部には、大山に由来する火山灰、火山砕屑物、扇状地堆積物等が広く分布。
緩やかで広大な斜面が形成。
この斜面が日本海に面した地域→浸食されて海食崖。

対象地
海食崖の前面に堆積した崩壊土砂が降雨により日本海へ流出→漁業被害。
今回はその土砂流出対策の工法検討を行った事例を紹介。
2.地形・地質概要
 

平面図は下が北。
上下2段のほぼ平坦な面とその間の斜面で構成。
斜面は上部の崖地形と下部の緩斜面に分けられる。

土地利用→上部平坦地→農地や住宅地
崖と緩斜面→土地利用なし、植生あり。緩斜面末端部→農道。
下部平坦地→水田として利用。
沿岸→ウニやアワビの漁場。

地質構造→上部平坦地→火山砕屑物に由来する堆積物で構成。
緩斜面→これらを起源とする崖錐性堆積物で形成。


3.崩壊状況
 
今回の崩壊対策工→土砂や濁水の流出に伴う漁業被害を軽減するために計画。
漁場+水田が保全対象。
当初→崖と緩斜面に対して土留め擁壁の計画、施工中に崩壊が発生(崩壊は緩斜面)。
工事用道路として農道を拡幅するために切土した箇所と、土留め擁壁の床掘をした箇所。

崩壊時には豪雨等の異常気象なし。
 
木のないところが緩斜面、暗く見えるところが崖

崩壊の形態
崖錐性堆積物が泥状、流動化。土砂の一部は農地に達した。
斜面勾配23°~29°、崩壊規模は幅約4m、長さ8~10m、深さ0.8~2m。
着手した時点→応急対策として法尻に大型土のう。それ以上の流出を防止。
写真は東側の2箇所。


4.調査結果と崩壊原因の考察

施工中に崩壊→土留め擁壁から計画変更、改めて対策工を検討。
崩壊原因の解明→地表踏査とボーリング調査。
 

地質断面図


地質構造
(横断図)→青は粘性土層、オレンジ色は砂礫層、砂礫層と粘性土層の互層で形成。
砂礫層は未固結~半固結で、主に玉石混じり砂礫。粘性土層は火山灰質。
崖の砂礫層が浸食されやすい地層→小さな崩れが常時から発生して崖錐性堆積物層を形成。
崖自体は大規模な崩壊が発生しにくいと考えられる。
崖錐性堆積物→礫、砂、粘土からなるルーズな堆積物。
水の影響で泥状、変形・流動化しやすい土質。
不透水層である第2粘性土層の上位。
厚さ0.6m~最大3m程度。

(水)→砂礫層は帯水層、崖の至る所から水が滲み出し。
崖錐性堆積物層への浸透水→不透水層のため伏流水、緩斜面の末端で湧水。
田面に湧水なし。

崖の状況 写真①

砂礫層湧水状況 写真②

緩斜面末端部湧水状況 写真③

(写真①)崖の状況→植生に覆われている。比較的安定していると考えられる。
(写真②)砂礫層からの湧水→滲み出した水が露頭を濡らしている。
(写真③)緩斜面末端湧水→土砂が流されて礫が点々と残留している。
 

踏査平面図

 
(平面図)→(黄緑が崖地形、灰色が崖錐性堆積物)
緩斜面は、
①崖の湧水によって至る所で湿地化。
②ガリーや開口亀裂、ブロック化して局所的に不安定。
③農道→路面・路体ともに亀裂等の変状なし。

以上のような状況から、
崩壊→緩斜面末端付近から不安定化、次々に上方に波及していく後
退性崩壊の形態をとるものと推定。
このような調査結果から、緩斜面全体で同様の崩壊が
起こる可能性があると判断。



崩壊の原因のまとめ
 
 
素因の地質要因 ・崖錐性堆積物がルーズな土質である。
 ・その下に不透水層が存在する。
                          ・伏流水がある。
                          ・崖の砂礫層が風化しやすい。

地形要因             ・崖地形となっている。

誘因の自然作用は特定できないので一般的なもの。

人為作用             ・構造物の床掘や道路の拡幅。 
                          ・床掘時の重機の荷重。    
5.工法検討
 
 
以上の調査結果を基に工法検討。
要因の中でも自然作用→除去が困難。

対策工は、自然作用以外の要因の作用力を減少させる工法を選定することになる。
・何を減少させるか→崖の崩落と緩斜面の崩壊に分けて説明。
崖崩落→大規模な崩壊→起こりにくい(調査結果)。
小規模な崩落→緩斜面が緩衝帯。なので無処理。
緩斜面→崖錐性堆積物が泥状となって流出→濁水が生じることが問題。
なので泥や濁水の発生を防ぐために、緩斜面の崩壊の抑制を対象。

このように、 で囲んだ、緩斜面に関する部分を特に配慮することとしました。
・工法選定に当たって
人為作用が崩壊の誘因→掘削などの土工を避ける、重機などの載荷を避けることを条件。



6.対策工
 
 
緩斜面の崩壊を防ぐには→末端の不安定化を抑制すれば土砂流出は防止可能。
対策工→フトン籠工を採用。
              崖錐性堆積物層の湧水処理と斜面末端保護を兼ねる。
フトン籠→不等沈下に対応できる。対象地のような支持力があまり期待できない地盤でも有効。
対象地が海岸→耐食性を考慮して亜鉛メッキを施した鋼製フトン籠。
2段積みを基本にして、ポケットを設けた。
前面の水路に排水溝→湧出してくる水を受けられる。
鋼製フトン籠の設置→緩斜面のすべりに対して数%程度の安全率上昇を見込む。

(写真A)排水溝流出状況

(写真B)暗渠排水

(写真A)→排水溝の側面の穴から水。
(写真B)→緩斜面の湧水の多い箇所には暗渠排水。
 
7.終わりに
 
 
今回は緩斜面のみの対策工→崖に対する工法も含めると多くの工法が挙げられる。
当地区での地質特性と保全対象を考慮→緩斜面部のみに対しての対策工でも効果がある。

詳細な現地踏査によって地形・地質構造を明らかに→工法・施工方法に反映していく→減災対策工へとつながる有効な手法の一つであると考えています。